円錐形の軸のように、両端の直径が異なり、円柱表面が傾斜している場合ものを「テーパ」といいます。それと似た表現で「こう配」と呼ばれるものがありますが、こちらは平面に対して傾斜する割合のことです。「テーパ」は工事現場で使われる三角コーン、「こう配」は滑り台斜面のイメージに近いですね。
今回はテーパについて検証してみました。まずは、オートデスク社の製造系3次元CAD製品であるInventor(インベンター)を使って、高さが150mm、底面直径が100mm、上面直径が90mmの円錐型の3Dソリッドモデルを作ります。手順は次の通りです。
- YZ平面に2Dスケッチで直径100mmの円を描きます。
- その平面から150mm離れたところに作業平面1を作成します。
- 作業平面1に2Dスケッチで直径90mmの円を描きます。
- 大小2つの円からロフトで円錐型にします。
単なる円錐ならば、100mmの円から角度を付けて「押し出し」をすればよいのですが、テーパ比率(1:x)を指定した押出しには対応していないので、今回は「ロフト」を使用しました。この3Dデータ(テーパ.ipt)を2次元図面化し、Fig.2のように配置し寸法記入を施したデータをテーパ.idwとします。
新幹線などの流線形の乗り物などでは、尖った方を左側に置くのが普通ですが、円柱状の部品は旋盤加工する状況に近い配置、すなわち直径の大きい方を左側にもってくるのが一般的です。長さと両側の直径でテーパの傾斜は決まってしまうので、上下の直線の開き角度は()を付加した参考寸法としています。
この場合、150mmの長さの両端で、直径の差が10mmあるので、その比率は10:150ですから、単純に書けば、1:15になります。図面中にテーパ表現をしたものがFig.3です。テーパを記入した代わりに重複となる寸法は削除しています。作業的には「引出線注記」を使って先頭に空白部分を儲けた1:15を記入した後、「文字書式」でテーパのシンボルを選択し記入しています。また片側だけの傾斜(こう配)を考えると1:30となります。
ここまでは一般的な機械製図の書籍に書いてあるような説明で終わってしまうのですが、先日作成した機械部品の図面作成で迷ったことがありました。テーパ部分を含む製品の現物を元に2次元図面を作成する業務です。作成にはAutoCADを使用しました。依頼時には「テーパの角度は2°」と聞いていたので、テーパ部も2°で作成してみると、どうも現物のテーパとは違います。その製品検査で使用しているというテーパゲージ、リングゲージを送ってもらい、そちらも実測するとテーパ角度は2°になっていません。実測の結果では、Fig.3と同じ1:15なのです。片側の傾斜を考えると、tanθ=1/30=0.03333・・・となり、θは1.91°、両側で約3.82°となります。両側で2°とはかけ離れています。
そこで、2° と 1:15 の関係について、考えてみました。具体的な加工手順についてはわかりませんが、旋盤の刃物台の角度は片側の1:30となります。60に対する比率を考えると2:60となるので、そこから2°という表現方法になったのではないかと推測しています。いずれにせよ、実測して自分で確認することが必要ですね。