先月JAVC(日本ビジュアルコミュニケーション協会)主催によるFusion 360のセミナーで、講師として登壇いたしました。
その際、Fusion 360単体で
「テクニカルイラストレーション技能検定に対応することができるかどうか」
という課題が上がりました。
この技能検定は厚生労働省が定めている国家検定であり、試験の実施については各都道府県の職業能力開発協会が実施しています。
Fusion 360での受験が認められるかどうかは、各職業能力開発協会の判断による所ですが、技術的な観点から検証してみました。
Fusion 360は3次元形状を作成することができ、さらにその3Dモデルから2次元図面化も可能とするソフトウエアです。
テクニカルイラストレーションで求められる完成物は、基本的に等測投影図です。
3次元モデルが作れて、等測投影図に必要とされる視点もViewCubeを使って容易に得ることができるので3D空間内では特に機能的な問題はありません。
試験の最後には、用紙出力およびデータで提出が必要となりますが、Fusion 360のメニューには、図面をPDF出力するためのボタンが備わっているので、PDFファイルで対応することになるでしょう。
課題で与えられた3Dデータを作成するところまでは特に不都合はありませんが、問題は2次元図面です。
クリアしなければならない事は次の4点。
(1)ネットに接続できない環境で、作業できるか
(2)図枠と表題欄は指示された形状で作成できるか
(3)線の太さの設定ができるか
(4)任意の場所に、連絡線や中心線は記入できるか
(1)については、直近の2週間以内にサインインした過去があれば、オフラインモードで起動させることができます。
その一方(2)~(4)については、現状Fusion 360単体では対応することはできません。
3Dモデルの作成~2次元図面化までは、Fusion 360で行い、DWGデータ出力したものをAutoCAD LT等に読み込んで、2次元CAD上で仕上げるのが最も現実的であろうと思います。
ここでAutoCAD LTと書いたのは、LTではなくAutoCAD(レギュラー版)が使える環境であれば、3Dモデル作成からAutoCADでやってしまった方が手っ取り早いからです。
敢えてFusion 360を使う必要はありません。
ちょっと、残念ですね。
但し、Fusion 360はユーザーの要望を取り入れたバージョンアップが頻繁に行われており、今後は対応できるようになるかもしれません。
繰り返しになりますが、実際の検定試験では使用可能なソフト等の条件は、各都道府県の職業能力開発協会が個別に定めているので、技術的にクリアできたとしてもFusion 360で受験できるとは限りません。
ところで技能検定の話からは外れますが、現状でも2次元図面の表題欄の入替えの要望は多いようです。
AutoCAD LTで表題欄を別途作成し、DWG形式で保存することによってFusionデフォルトの表題欄をそっくり入替えてしまうことが可能です。
Fusion 360の表題欄を会社独自のものと入れ替える時の手順
(1)AutoCADで、表題欄を作成します。この時、表題欄の右下を原点にして作図しておきます。Fusion 360で部品表を挿入するつもりなら、表題欄の横幅もそれに合わせて180mmにしておくと良いでしょう。
(2)シート設定メニューから、「表題欄を表示」のチェックを外し、非表示にします。
(3) 「表題欄」>「表題欄を挿入」をクリックし、(1)で作成したDWGデータを選択して開きます。
(4)デフォルトの輪郭線(境界)にピッタリ収まるように挿入されます。
(5)必要であれば、部品表>パーツ一覧をクリックします。
(6)表題欄の上にピッタリと収まりました。
Fusion 360から2次元図面を作成でき、寸法記入、文字記入も可能ですが、図面上への線の追加には対応できないので、用途を見極めることが必要となります、
弊社ではFusion 360の出張研修、テクニカルイラストレーション技能検定の対策講座を行っております。詳細・お問い合わせはCADCIL(キャドシル)へ